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聖ヨセフ、私たちのために祈ってください。

G.T.

 

 私を育んでくれた母国のラ・サール会の小学校、中学校、高校では、全校朝礼や学校行事やお祝い事などの始まりに、必ずお祈りを捧げていました。中学校の守護聖人は聖ヨセフだったので、祈りの最後には必ず、「聖ヨセフ、私たちのために祈ってください」と言って、その執り成しをお願いしていました。

 

 また、学校の創立記念日や聖ヨセフの祭日を祝う時のミサでは、さらに「聖ヨセフの連願」も祈っていました。その頃から個人的なお祈りでも、自然に聖ヨセフの執り成しを求め、聖ヨセフに親しみを感じるようになりました。

 

今年は12月8日まで聖ヨセフの特別年


 教皇ピオ九世が聖ヨセフを「普遍教会の保護者」とする宣言150周年を記念し、教皇フランシスコが宣言された「聖ヨセフの特別年」(2020年12月8日~2021年12月8日)は、あと2カ月で終了します。もちろん、それによって、「神の母マリアの夫」であり、「神の御子の養育者」に選ばれた聖ヨセフへの崇敬が終わるわけではありません。


 ただ、せっかくの「聖ヨセフ年」において、この「誉れ高いダビデの子孫」であり、神様が選ばれた特別な「キリストに仕えた方」のことをより深く知ったり、より一層の親近感を感じたり、彼の神なる主イエス・キリストに対する愛を大いに教わったりするこの大きな機会が、「もしかして十分に活かされていないうちに終了してしまうのでは」と勝手に思いますと、何だか寂しく感じます。昨今のコロナ禍にもたらされている、ミサの非公開や制限、諸活動の中止や自粛など広範に及ぶ影響で「特別年」らしきのお祝いや諸活動の開催ができず、「聖ヨセフ年」のことすら知らない信徒たちもいるらしく、とても残念に思います。


 聖ヨセフのことについて、福音書で記すところはわずかで、彼が発した言葉は一つも記されていないようです。一見にして目立たなく地味な存在であると思われがちかもしれませんが、実際には福音書のそのわずかな記述が聖ヨセフの重要な存在が大いに語られ、私たちが聖ヨセフからたくさんのことを教わることができると、歴代の教皇たちが私たちに教えられています。


「聖ヨセフの連願」「教皇フランシスコの使徒的書簡」


 1909年に教皇聖ピオ十世によって全教会での使用が承認された「聖ヨセフの連願」にある聖ヨセフの呼び方がその大きな存在感を表しています。さらに今年の5月に新しい7つの呼び方が追加され―「贖い主の守護者」、「キリストに仕えた方」、「救いの奉仕者」、「困難なときの支え」、「国を追われた人の保護者」、「苦しむ人の保護者」、「貧しい人の保護者」―これらは、聖ヨセフの様々な姿について考察した、教皇聖パウロ六世、教皇聖ヨハネ・パウロ二世、そして教皇フランシスコの発言の中から選ばれたものです。


 「聖ヨセフの連願」 の祈りを通じ、福音書でわずかに書かれている聖ヨセフの姿と、私たちに教えていることをより深く知るようになるのではないかと思います。また、「聖ヨセフ年」を記念して、教皇フランシスコの使徒的書簡「父の心で」 に挙げておられる7つの聖ヨセフの父親像の姿を黙想することによって、聖ヨセフについての理解をより深めることができるのではないか、と思います。

聖ヨセフが言った大切な言葉


 最後に、「福音書を読んで、聖ヨセフは一言もしゃべっていない」と思っている人が多いかもしれませんが、実はそうではありません。福音書には聖ヨセフが少なくとも、ある大切な言葉を最初に公に告げ知らせた人だったと記されているのです。


 「…主の天使が(ヨセフの)夢に現れて言った。『ダビデの子ヨセフ、恐れずマリアを妻に迎えなさい。マリアに宿った子は聖霊の働きによるのである。/マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである』」(マタイ福音書1章20節~21節)。

 

 「八日がたって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。胎内に宿る前に天使から示された名である」(ルカ福音書2章21節)。

 

 ユダヤ教の習慣では、割礼の際に子供に名前をつける義務と権利を行使できるのは父親だけです(洗礼者聖ヨハネの父親であるザカリアも彼を「ヨハネ」と名付けた―ルカ福音書1章59節~69節参照)。すなわち、割礼の際、聖ヨセフは幼子キリストを「イエス」とはっきり言って名付けたと記されています。


 この御名は、唯一の救いのある名前なのです(使徒言行録4章12節参照)。その意味は、聖ヨセフの「お告げ」の時に明らかにされていました(マタイ福音書1章21節参照)。聖ヨセフは、幼子キリストの御名を付けることで、主イエスに対する法的な父親であることを宣言し、その御名を語ることによって、救い主としての幼子の使命を宣言したのです。


聖ヨセフ、私たちのために祈ってください。

 

聖ヨセフの連願

教皇フランシスコ、使徒的書簡「父の心で」(カトリック中央協議会)